フィジカルとデジタルの境界線
フィジカルとデジタルの境界線

より良いショッピング体験を可能にするフィジタルとは?

現代の小売店は、商人たちが商品を売るために町の広場に集まった紀元前800年頃の古代ギリシアが起源と言われています。当時は物々交換が行われていましたが、次第に利便性の高い貨幣も使われるようになりました。

それから現在までに急速にテクノロジーが発達し、商売で使われるツールや手法は代わりましたが、驚くべきことに小売業の目的はほとんど変わっていません。それは、お客様に価値を提供することで利益を得る、ということです。

オンラインとオフラインの世界の融合

現在の小売業にとって、優れた顧客体験と価値を生み出すことで競合他社から抜きん出ることが、かつてないほどに重要になっています。フィジタルという言葉が、それを実現するお役に立つかもしれません。フィジタルとは、物理的な体験とデジタルの体験を融合することを意味します。オンラインとオフラインで顧客の行動を把握し、継続的に分析することで、データに裏付けられた結果を生み出すことができるのです。「フィジタル」を実現することで、オムニチャネルのレベルをさらに引き上げ、パーソナライズされた魅力的な体験を提供できるようになるのです。

全米小売業協会(NRF)によると、消費者の97%が購入体験が不便だったため、購入をやめている。

中国では、このフィジタルという概念が爆発的に展開されています。小売店では、AIと顔認識を組み合わせて、買い物客に超パーソナライズされたサービスを提供しています。例えば、財布を出さずに支払いが完了するような仕組みを取り入れ、不便さやお客様の負担を軽減しています。

小売業者がフィジタルを実現するために考慮すべき5つの要素について

  1. オムニチャネル: 役割、責任、プロセスを設定すること
  2. 消費者心理: 閲覧画面の配置を検討すること(例えば、右利きの人は右手側の製品を取っていく、といった行動心理を考慮すること)
  3. 収益認識: チャネルの垣根を超えた予算設定ができること
  4. 顧客志向 小売店とデジタル店舗で情報を同期、最適化すること
  5. カスタマージャーニー:: フィジタルを定期的に評価できること

    出典: Forbes

3つの事例:

1. ARを使ったヘアカットとQRコード
Amazonはイギリスの美容室である実験を行いました。ARをアプリを使ったこの実験では、ヘアスタイルや色を決める前にARアプリを使用してその出来栄えを見られるようにしました。他にも、お客様が興味を持った商品をアプリでかざすだけで、その商品について詳しく知ることができます。また、QRコードを使って商品を購入し、自宅に配送することができるので、買い物中に商品を持ち運ぶ必要がありません。

2. 高度にパーソナライズされたメッセージ
小売業者にとって、お客様を知るための努力は欠かせません。そうすることで、お客様のニーズを予測し、商品やサービスを適正な価格で提供できるようになるからです。フィジタルを活用した小売では、物理店舗とオンライン店舗双方のお客様のデータを活用して、競合他社よりも優れたサービスを提供できます。

Forbesによると、中国の多くのブランドがアルゴリズム、ソーシャルコマース、WeChatを活用して、パーソナライズされた顧客体験を提供しているといいます。お客様にオススメの香水を紹介するのはもちろん、待ち時間にお気に入りのカフェを予約するなど、お客様の買い物体験をよりパーソナライズするような仕掛けを提供しています。

3. 店舗内でのモバイルの利用
消費者はWebを使って製品の評価を確認します。そして店の中では、スマホなどを使って調べ物をします。小売業はこれらの行動様式を踏まえて、独自の価値提案をすることが可能です。

ARやVRを活用することで、よりパーソナライズされた体験と利便性を実現できます。例えば、服を購入するときに、スマートミラーでお気に入りの服を選択すれば、20枚の服でもバーチャルで試着することができます。家具を購入する時にも、どのような配置、見栄えになるのかを確認できます。また、人の顔の物理的な特徴を分析して、AIがその人に合ったメガネフレームを提案、作成することも可能です。

オムニチャネルを次のレベルへ

フィジタルとは、オムニチャネルのユーザー体験をさらに拡張するものであり、消費者の購買意欲を刺激することが可能です。フィジタルを実現するには、常識にとらわれないことが重要です。そして、お客様の立場になってシンプルな買い物体験が何かを追求することが大切です。その上でお客様とのコミュニケーションをパーソナライズしましょう。また、お客様だけでなく従業員に対する対策も重要で、適切なトレーニングを実施し、適切なインセンティブを用意することで、従業員のやる気をアップしましょう。