ハイテクメーカーが小売や卸などのパートナー企業とのトランザクションの詳細を可視化する方法に、チャネルデータ管理(CDM)という考えがあります。CDMで販売チャネルのデータを適切に管理できれば、データの分析が可能になり、売上の増加や無駄な支出の削減につなげ、チャネル施策に対する投資対効果の向上につなげることができます。
ある通信事業者は、チャネルデータ管理を改善したことで、販売チャネル経由の収益が年率5%増加し、販売促進費を10~15%削減しました。ハイテク業界では販売チャネルを経由した売上が1兆ドルを超えていることから、販売チャネルに支払うインセンティブは少なくとも500億ドル以上になると考えられます。このことから、チャネル管理の効果は非常に大きいと考えられます。
実用的なデータか、それとも単なる寄せ集めか
上手に販売チャネルからのデータを管理することができれば、クリーンかつ正確、完全な最新データを得られるようになります。信頼できるデータから実用的な示唆を導き出すことができれば、より早く、より効率的に目標を達成することができます。例えば、あるターゲットに対して適切なキャンペーンを実施することで高い効果を得ることもできます。また、データを把握することで、卸業者や小売業者に対するリベート金額の過払いも少なくなり、支出が減るので、その分が利益に直結します。
データから真実を把握
セグメントを細分化してプロファイリングすることは、組織全体に大きな価値をもたらします。データを活用することで、以下のことが可能になります。
- データを活用することで、卸売業者や小売業者の活動内容と実績を確実に把握できます。
- 適切にリベートプログラムや拡売施策を実行し、取引先と適切にコミュニケーションをとることで、両者の関係性を発展させることができます。
- 販促プログラムや販促用コンテンツへのアクセスを卸売業者や小売業者などの取引先毎に効率的に管理できます。
管理の重要性
チャネルデータ管理を成功に導くためには、業務プロセス、ガバナンス、ツールの3つの要素が重要です。ガバナンスが欠如していると、最高のプロセスとツールを持っていても効果がありません。ガバナンスの欠如は、悪い結果を招きかねません。
データガバナンスは、企業がビジネス価値を提供するための重要な基礎的要素です。それには以下が含まれます。
- アナリティクス
- 合併・買収
- ビジネス・インテリジェンス
- クレジットリスクマネジメント
- 財務・規制コンプライアンス
- ビジネス・プロセス・マネジメント
- マスタデータの価値
企業のチャネルデータ管理の取り組み方は、その成熟度によって異なります。それぞれのレベルに合わせて工夫することで効果を上げるチャンスがあります。私達はこれらを「クロール(這う)」「ウォーク(歩く)」「ラン(走る)」という3つのフェーズに分けています。
- クロール(這う)- 業務効率を向上
クロールとは事務処理の業務を効率化するフェーズを表します。卸売業者からの請求内容の誤りが少なくなることで処理スピードが速くなれば、売上の可視性も向上し、訂正を早期に実行できます。加えて、効率と生産性が向上することで、より付加価値の高い活動にリソースを割くことができるようになります。価格決定タイミングの遅れが売上に影響している場合、最終価格を反映する期間を短縮できれば、売上の減少を防げるようになります。 - ウォーク(歩く)- 収益増に貢献
ウォークとはビジネスを成長させるフェーズを表します。優れたデータを適切に活用できれば、売上や利益率を高めることができます。施策を絞って個別にPDCAを回すことで、成功率の高いマーケティングキャンペーンを実施できるようになります。営業チームと協力してター ゲットにアプローチをすることで、需要を生み出すことができますし、拡売施策の貢献度の評価やインセンティブの検証も可能になります。 - ラン(走る)-事業を変革
会社を次のレベルに引き上げるフェーズであり、データに基づいた示唆を通じて、価格戦略や顧客セグメンテーションなど、市場の変化を察知できようになります。また、適切な製品を適切な顧客に適切な価格で提供することができます。もしかすると、製品カテゴリーや製品ポートフォリオなどの事業戦略を再定義するきっかけになるかもしれません。
優れたデータは他にも、販売チャネルの新規開拓や市場参入計画の差別化、イノベーションの促進などのメリットをもたらすのです。