生産業者や小売業者との関係強化が収益拡大に貢献
世界の卸売業の市場は1,300兆円規模とも言われていますが、そのサプライチェーンには課題が山積しています。その中で、卸売業者は、ただでさえ低い利益率を維持するために、取引先との関係を適切に保つことが成功の鍵になっています。
卸売業界では20%の大口の取引先からの収益が全体の80%を占めるとも言われています。収益を高めていくためには大口の取引先との良好な関係を維持するだけではなく、小口の取引先との関係を育てていくことが非常に重要です。しかしながら、それを実践することは口でいうほど簡単なことではありません。
以下に、卸売業者がこのような小口の取引先のロイヤリティを高めて信頼を築いていくために役立つヒントをご紹介します。
1.デジタル化 – Amazonのように卸売業者を経由せずに消費者と直接つながっている企業と競争していくために、デジタル化は最優先事項であり、これによって取引先とのパートナーシップの維持と拡大を目指すことができます。
デジタル化することで、取引先とのコミュニケーションや取引状況をモニタリングできるようになります。さらには、デジタル化によって見える化することで、予算計画が立てやすくなると同時に、業務の効率化、収益漏れの抑制、収益機会の最適化、物流コストの削減にも貢献します。
データに基づいてサービスを強化することができれば、カスタマーエクスペリエンスの向上、時間とコストの削減に加えて、取引先との長期的かつ強固な関係の構築が可能になり、変化を続ける取引先のビジネスニーズや課題に柔軟に対応できるようになります。在庫や過去の注文履歴、注文パターンに関する詳細など、様々な切り口でリアルタイムのデータに直接アクセスできることができれば、売掛金管理、物流などの業務で、取引先の期待を上回るサービスを提供することができます。
2. オープンで一貫性のあるコミュニケーション – 取引先に対して、どの担当者からも一貫性のあるコミュニケーションを取れるようになれば、最適なサービスの提案や迅速な課題解決が可能になり、取引先の満足度の向上に貢献します。そして、それは自社のビジネス価値の向上にも繋がります。
定期的にコミュニケーション内容を評価することができれば、契約や販売、サービスに関する問題が発生する前に対処することも可能になります。
3. シンプルであること – 取引先は、シンプルかつシームレスで使い勝手の良い体験を求めており、迅速かつ柔軟な対応を高く評価する傾向にあります。特に、商品の購入と顧客サービスにおいてそれが顕著であり、シンプルであることは非常に重要です。
取引先がシンプルに御社のサービスを利用できるようになることは、長期的な関係構築に貢献します。
4.高いサービス目標の設定 – ほとんどの取引先は不満を言うことはありません。万一、取引先が非常に強い不満を抱かれた時にその問題を迅速に解決できれば、その企業は引き続き御社と取引をしてくださるでしょう。
顧客サービスを縮小すれば、最大20%のコストを削減できるかもしれません。しかしながら、既存顧客の維持よりも新規顧客を獲得して育成する方が、コストは最大10倍かかるのです。
プリセールスやポストセールスなど、あらゆるタッチポイントでカスタマーエクスペリエンスを向上させるというマインドセットを持つことで、競合他社の一歩先を行くことができます。顧客満足度が高いことは、潜在顧客に対して御社と取引することがいかに素晴らしいかを示すことにもなります。そのためには次の準備が必要です。
- 適切な人材を採用してトレーニングを行い、すべての従業員が優れたカスタマーサービスを提供できるようにすること
- 常に、時間通りに配送すること
- 完璧さと品質を追求すること
- 常により良いサービスを目指すこと
5.おもてなし – 比較的小規模の取引先とのビジネスを継続するために、おもてなしが必要になる場合があります。これには、公正な価格とタイムリーな配送に加えて、それ以上のサービスが必要になります。
例えば、取引先に感謝していることを伝えるだけでなく、小さなおもてなしを実行することで、積極的で付加価値のある関係を築くことができます。
- 成長戦略を共有して、ターゲット市場の拡大と売上と収益の増加を一緒に目指すこと
- 特別割引、無料配送、無料のアイテムといったサービスを実行すること
- リピーターや新規紹介に対してインセンティブを提供すること
新しいテクノロジーが勃興し、消費者の期待値が高まっている今、お客様を中心に物事を考える必要があります。説明責任、俊敏性、透明性を重視したパートナーシップは、戦略的で相互に有益な関係を構築します。これは他社との差別化と成長の要因となり、生産性、収益性の向上につながります。
御社サービスを評価するための3つの質問
御社はデータを活用して、大口の取引先との関係を強化するための施策を打てていますか。
取引先が御社を一番に選んでいただけるように、顧客視点煮立った施策を打てていますか。
小口の取引先が御社との取引を拡大しようと思うような機会創出ができていますか。