パンデミックによるブルウィップ効果に対処するためのサプライチェーン・マネジメント
新型コロナウイルスのパンデミックによって、多くのコンテナ船が主要な運河に足止めされました。世界中の企業が、世界的なパンデミック、経済の不確実性、異常気象がサプライチェーンに大きな影響を与えることを知り、未だにその影響を受けています。
「サプライチェーンがこれほど注目されたことはありませんでした」と、Launchpad(www.launchpad.build)の創設者兼CEOのYoav Zingher氏は言います。2020年には、皆さんが御存知の通り、価格競争の中で、ものづくりにおける柔軟性や革新性、そして適応能力が著しく低下していることが明らかになりました。変化の少なかった世界では、価格を下げることが競争力を強化するための最も簡単な手法でした。しかしながら、パンデミックによる影響や技術革新などによって世界は急速に変化しており、ものづくりの柔軟性と適応能力を高めることが、他社から抜きん出るための最善の方法であることが明らかになりました。
製造業のミスマッチ
パンデミックが宣言されると、メーカーは不況を予期し、これまでの景気後退と同じパターンの対応をしました。生産ラインを停止し、余剰在庫を売却したのです。しかし本当の問題は、消費者がその行動を取っていなかったことにあります。
サプライチェーン・マネジメントにおけるブルウィップ効果
ブルウィップ効果とは何か?
サプライチェーンにおけるブルウィップ効果とは、顧客側の需要の変化によって、小売、卸、製造と連鎖的に需要変動が生まれ、波及していく現象のことを言います。小さな変化が小売業者側に伝わると、その後ろにある流通業者、製造業者、供給業者に対して徐々に影響が拡大し、サプライチェーンを混乱させます。
米国連邦政府のデータによると、2020年に耐久消費財の個人消費は6.4%増加したものの、それらの商品の国内生産が8.4%減少したことで、欠品と価格上昇を招きました。
その結果、多くの人がビジネススクールで学び、不況時以外はその存在すら忘れてしまう、ブルウィップ効果が見られました。サプライチェーン・マネジメントにおけるブルウィップ効果とは、誤った需要予測によって引き起こされた供給の変化が、サプライチェーン全体に波及していく現象のことを言い、小売業者だけでなく、流通業者、製造業者、供給業者も混乱させていきます。
現実とのギャップ
今までの景気後退では、売上高の低下に伴い、企業は人員削減や在庫の売却、引当金の管理などをしていました。売上や需要が回復したように見えると、需要の増加に追いつくために注文が多く入るようになります。このため、製造業者、流通業者、供給業者は、サプライチェーンの中で常に価格変動が発生します。しかし今回は、世界中に広がったコロナウイルスのように、ブルウィップ効果が現れています。それは異様な光景であり、これまでに見たこともないような現象になっています。
異常な例は、複数の業界で見られます。例えば、高級品の需要は通常、不況になると落ち込みます。そこで、サプライヤーは不況に備えて、在庫を処理しました。しかし、需要は落ち込みませんでした。全米海運業協会によると、2020年の米国におけるレクリエーション用ボートの販売額は過去13年間で最高となりました。他にも、自動車、家電、家具などの耐久財の受注も増加しました。
小売業者、製造業者、流通業者は、在庫の不足と需要の増加によって注文過多となり、その数はかつてないほどに増加しました。その結果、最終消費者に至るまで、サプライチェーン全体にその影響が波及することになりました。そして、その影響が正常に戻るまでには、数ヶ月から数年かかると予想されています。
製造業者や卸売業者も、主にサプライチェーンにおいて同様の課題を抱えています。何をやっても、元に戻らないのです。製造業者は、在庫過多か在庫不足に陥り、それに対処するための新しい方法を模索しています。特定の製品の価格を上げつつ、売れない余剰在庫を買い取ってもらえるように販促していくにはどうすれば良いでしょうか。世界的な海運危機も忘れてはいけません。この問題は未だに解決されていないのです。
不確実性が現実となっている今、計画や市場戦略に機敏さと柔軟性が求められます。ひとつだけわかっていることは、パンデミック、地政学的危機、気候災害がまだまだ続くということであり、供給不足は常態化するかもしれません。
企業は、今後、製造業者と流通業者はこの変化に対して協力して柔軟に対処していかなければならないでしょう。