価格最適化 – その定義を正しく理解しよう

価格最適化 – その定義を正しく理解しよう

価格最適化とは?

「価格最適化」という言葉は、最適な利益を得られるように価格を設定するプロセスを指します。しかし実際には、この言葉の定義は非常に曖昧です。販売活動において、競合価格分析や価格見積の決定などに「価格最適化」が使われるため、その定義が混同されています。また、「価格最適化」という言葉は、法的な意味も持ち始めています。2017年の時点で、特定の業界、特に保険業界において「価格を最適化すること」を禁止する州がアメリカで20州もあります(The Consumer Federation of America, 2017)。よくよく調べてみると、ここで禁止されているのは取引先によって価格を変える「価格差別」のことであり、必ずしも価格の最適化ではありません。しかし、司法上、このように定義が確立されているため、価格最適化は、法的には価格差別のことを意味するようになっています。このような事実に加えて、プライシングの専門家の間でさえ、「価格最適化」という言葉の定義は曖昧です。専門家の間では、多くの場合、価格最適化と言えば、数学的な手法を使って、製品やサービスの価格をチャネルごとに変えることで顧客の需要にどのような変化があるのかを示す「需要モデル」を指しています。この文脈では、「需要の価格弾力性」のことが「価格最適化」と同義であるかのように使用されています。

このように「価格最適化」の意味が異なるのは、最適化という言葉の捉え方が人によって異なる上に、価格を構成する要素は常に変化し、その価値基準が絶対的なものではないためだと考えられます。 企業が「価格最適化」を進めていく上で最も効果的かつ実践的な方法は、その言葉の意味を広義に捉えることです。そのためには、価格を設定するプロセスにおいて、価格に含まれる全ての要素を把握する必要があります。そして、これらの価格の構成要素とそれぞれの役割の違いを理解することが、「価格最適化」を成功に導く鍵となります。

それでは、価格を構成する要素とそれぞれの役割の違いについて理解するために、次のことを念頭に置きましょう。

List prices are just reference prices

定価は参考価格である

定価を設定しても、多くの取引先は全く異なる金額を支払っていることでしょう。企業間取引で定価を設定しても、多くの場合、定価で取引されることはありません。

Customers care about the sales price

販売価格が重要である

価格に対するお客様の反応をモデル化する場合、諸費用、配送料、税金などのお客様が支払う必要のあるもの全てを考慮する必要があります

Customers don’t care about your cost structure

お客様はコスト構造を気にしていない

製品の製造コストは企業側の問題であり、お客様には全く関係ありません。お客様が納得する価格とは、その製品がもたらす価値と、お客様が持つ選択肢によって決まります。

Increase your bottom line

企業の目的は最終利益を増やすこと

価格最適化という観点では、正味価格、つまり販売価格のうち、送料や値引きなどを引いた金額が重要です。したがって、手数料、割戻金、リベートなどをしっかりと把握する必要があります。

需要モデルに使用すべき価格は、御社で決定した希望小売価格でも、利益や収益の観点で捉えた価格でもないのです。

参考文献

https://consumerfed.org/press_release/consumer-groups-applaud-nevada-insurance-commissioner-banning-price-optimization-closing-underwriting-loophole/

本ブログシリーズでは、様々なプライシング手法と、高度な分析による改善方法について説明する予定です。これらの情報が、御社の販売戦略を強化し、価値の付加に役立つことを願っています。